
QRコード決済の導入と利用におけるメリット・デメリット
レジでの支払いがスムーズに行え、ポイント還元などでお得に買い物ができることから、QRコード決済が普及しつつあります。国も消費増税後にキャッシュレス決済を支援しており、それに伴いQRコード決済ができる店舗も増えてきました。
そこで今回は、現在注目を集めるQRコード決済について、店舗側と消費者側それぞれの視点からメリット・デメリットをまとめました。
«店舗»QRコード決済の導入におけるメリット
導入のメリット・現金を減らすことができる
現金でのやりとりを減らすことができるため、会計の流れがスムーズになるほか、レジ締めの業務も軽減できます。また、釣り銭の準備も少なく済むので、防犯上のリスク軽減にも繋がるでしょう。飲食店などの場合、現金を触る機会が減ることでより衛生的に業務にあたることができます。
・集客の向上
あまり現金を持ち歩かないお客さまの集客に繋がるのはもちろん、国内のQRコード決済サービスにはポイント還元などを積極的に行っているものもあるため、お得に買い物をしたいお客様も集まる可能性があります。
また、海外のQRコード決済サービスを導入すれば、日本よりもキャッシュレス化が進んでいる諸外国から来る訪日客のインバウンド集客も期待できます。とくに、キャッシュレス大国と言われている中国からの観光客は、日本に訪れる観光客の4分の1を占めています。そうした観光客の需要に応えることで集客向上が見込めます。
・売上のデータ化
QRコードでの決済は、会計の履歴がすべてデータ化されて記録されるため、現金に比べて売上の管理がしやすくなります。
・初期費用を抑えることができる
また、クレジットカード決済などに比べると初期費用が抑えられるというメリットもあります。店舗はスマートフォンかタブレットさえあればQRコード決済に対応ができるので、端末費用がかからない場合もあります。
«店舗»QRコード決済の導入におけるデメリット
導入のデメリット・まだ認知度が高くない
国がキャッシュレス決済普及に注力しており、認知度は徐々に高まってきていますが、海外に比べると日本はまだまだキャッシュレス化が進んでいないのが現状です。そのため、QRコード決済の導入によってメリットを生み出すためには、消費者に対する店舗側の働きかけも非常に重要になってきます。
また、QRコード決済サービスによっても認知度が変わってきます。利用者が少ないサービスに対応しても上述のメリットが十分に見込めない可能性があるため、どのサービスに対応すべきかも考慮に入れる必要があります。
・決済ごとに決済手数料がかかる
基本的に、QRコード決済は決済ごとに手数料がかかります。手数料はサービスによって異なりますが、2~4%程度であることが多いようです。ただし、2020年6月30日まで国が実施しているキャッシュレス・消費者還元事業の期間中は、対象店舗における決済手数料を実質的に2.17%以下(3.25%以下の加盟店手数料のうち国が1/3を補助)に抑えることができます(キャッシュレス・消費者還元事業加盟店としての登録が必要です)。

«消費者»QRコード決済の利用におけるメリット
利用のメリット・財布やクレジットカードを持ち歩く必要がなくなる
スマートフォンにQRコード決済のアプリをインストールしておくだけで決済が可能なため、財布やクレジットカードを持ち歩く必要がありません。
・会計の流れがスムーズに
レジの前で小銭を数えたり、お釣りをもらったりといった手間を省くことができ、スムーズに支払いを終えることができます。会計にかかる時間を短縮することになるため、QRコード決済がより普及すれば、レジに並ぶ待ち時間も大幅に減少できる可能性があります。
・ポイントやクーポンの活用でお得に買い物ができる
QRコード決済サービスは、さまざまなキャンペーンやクーポン、またはポイント還元を実施しているので、現金で支払うよりもお得に買い物ができます。また、現在はキャッシュレス・消費者還元事業の期間中なので、対象店舗でキャッシュレス決済で支払うと最大5%のポイント還元も行われています。
・お金の履歴が残る
QRコード決済はアプリに利用履歴が残るため、買い物にいくら使ったか、ポイントがどれぐらい貯まっているかなどをすぐに確認することができます。レシートを保管しておく必要がないため、お金の管理が非常に便利になります。
«消費者»QRコード決済の利用におけるデメリット
導入のデメリット・利用できるお店が限られる
年々利用できる店舗が増えているとは言え、QRコード決済はまだまだ普及の途上にあり、利用できない店舗もいまだに多くあります。また、利用しているアプリに対応していない可能性もあります。
・スマートフォンの通信環境に注意
通信環境が悪いと、QRコードがアプリに表示できない、QRコードを読み取れないなど、支払いができない場合があります。もちろん、スマートフォンの電池が切れていても使用できないので、スマートフォンの状態には気を配っておかなければなりません。
まとめ
以上が、店舗・消費者の双方から見たQRコード決済のメリット・デメリットです。経済産業省は、2025年までにキャッシュレス決済比率を40%(現在のおよそ2倍)とする目標を掲げているので、今後もQRコード決済の普及は進んでいくと予想されます。これからさらに普及していくことで解消されるデメリットもあるので、ポイント還元や国からのキャッシュレス・消費者還元事業が実施されている今のうちに、ぜひ導入・利用を検討してみてください。
酒向 潤一郎(さこう・じゅんいちろう)
税理士 J’sパートナー総合会計事務所(酒向潤一郎税理士事務所)
一部上場IT企業に10年以上勤める傍ら、税理士として会計事務所の経営も行う複業税理士。最近では開業・副業コンサルに注力。会計専門誌など複数寄稿。趣味のJリーグを用いて会計や税金のしくみを優しく発信するほか、学童野球コーチのボランティアや現役選手として税理士会野球部に所属するほどの野球好きでもある。
(Twitter: https://twitter.com/Jun_Jspartner)
(Note: https://note.mu/jun_jspartner)